相続人の話し合いで遺産を何も相続しないとすることはできる?
可能です。
但し、相続人全員が遺産全てを相続しないということはできず、誰か1人は相続しなければいけません。
また、可分債権や可分債務などに関しては話し合いの対象になりません。
関連記事:遺産分割協議の対象になる遺産は?
人が死亡することを“相続が発生する”と言ったりします。
そして、相続が発生した場合、亡くなった者(被相続人)が有していた財産を相続人が承継することになります。
そして、誰がどの財産をどのような割合で承継するのかを相続人全員で話し合うことになります(※)。
この話し合いを遺産分割協議と言います。
※ 法律で定められた相続分(法定相続分)で相続手続きを進める場合は遺産分割協議は不要ですが、財産の内容によってはたとえ法定相続分による承継でも遺産分割協議が必要になることもあります。
また、遺産分割協議の対象になる遺産とそうでない遺産がありますので注意が必要です。
遺産分割協議は相続人間の話し合い
この遺産分割協議はあくまでも相続人間での話し合いですので、かなりの柔軟性があります。
もちろん、何でもかんでもアリということではありません。
例えば、相続人がAとBの2人、遺産として自宅不動産と預貯金がある場合を例に見てみます。
AとBは遺産である不動産と預貯金をどう相続するのか話し合うわけですが、主に次のようなパターンが考えられます。
①不動産はA(またはB)、預貯金はB(またはA)が相続
②不動産も預貯金もAとBで半分ずつで相続
③不動産はA(またはB)、預貯金はAとBで半分ずつで相続
④不動産も預貯金も全てA(またはB)が相続
⑤不動産も預貯金もAとBは相続しない
さて、上記の中で遺産分割協議として有効に成立しないものが1つあります。
結論から申し上げますと⑤です。
遺産分割協議として⑤は認められません。
遺産全てを相続人全員が放棄すること(⑤)は遺産分割協議の中ではできず、それをやりたいのであればAとBは相続放棄をする必要があります。
遺産分割協議の中で何も相続しないことは可能か?
上記事例の④がそれを実現させています。
不動産も預貯金も全てA(またはB)が相続することで、もう一方の相続人は何も相続をしない形になります。
このような方法を“相続分の放棄”と言ったりしますが、これは相続放棄(※)とは全く異なるものです。
※相続放棄とは、家庭裁判所に申立てをすることで相続人ではなくなる手続きです。これによりプラスの遺産(不動産や預貯金など)もマイナスの遺産(借金など)も承継しないことになります。
なお、上記事例では挙げていませんが、可分債権や可分債務などに関しては、少し考え方が変わる遺産となるので、ご興味のある方は下記もご覧ください。
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まとめ
相続財産(遺産)をどのように相続するのかを相続人全員で話し合うことを遺産分割協議と言うわけですが、この遺産分割協議はある程度の自由な取り決めが可能です。
しかし、完全に自由なわけではなく、一定の決まりがあります。
その1つが「相続人全員が遺産を放棄することはできない」ということです。
もし、相続人全員が遺産を放棄したいというのであれば相続放棄をする必要があります。
一方で、相続人の中に1人でも遺産を相続したいという者がいれば、他の相続人は遺産分割協議の中で遺産を相続しないと選択することも可能です。
これを相続分の放棄と言ったりするわけですが、相続放棄とは性質を異にするものです。
遺産をどのように承継するのか、それによって相続手続きの進め方や難易度が異なることも多くありますので、相続が発生した場合には、まずは相続専門の司法書士等に相談をすることをおススメいたします。