遺言書と遺贈による登記
保有資産に不動産がある場合、遺言書を残して自分の希望する相続の形を実現させたいとお考えの方も多いと思います。
遺言書は奥が深く、また不動産があると相続手続きにおいて登記という専門的な分野も絡んできます。
遺言書の内容によって、登記の内容も変わることもありますので、一定の注意が必要です。
特に遺贈による登記に関しては度々議論が起きており、いくつかの判断基準が示されていますので簡単にまとめたいと思います。
遺贈による登記(原則)
遺贈についてはコチラをご覧ください。
「〇〇に自宅不動産を遺贈する」というような遺言書を作成した場合、受遺者は遺贈による所有権移転登記を行うことになります。
当該遺贈が包括遺贈でも特定遺贈でも、受遺者と相続人全員(または遺言執行者)の共同申請で行います。
この時、受遺者が遺言執行者に指定されている場合、受遺者兼遺言執行者として遺贈による所有権移転登記を実質1人でできます(登研307号78頁)。
つまり、遺贈による登記は原則として共同申請となります。
遺贈登記の単独申請
一方で、全財産を相続人全員に遺贈する旨の遺言の場合には、相続人全員が単独申請の形で「相続」を原因とする所有権移転登記を申請することができるとされています(昭和38.11.20民甲3119号民事局長電報回答)。
また、令和3年改正により、相続人に対する遺贈に限り、当該相続人が単独申請で所有権移転登記をすることが明文化されました(不動産登記法63条第3項)。
この相続人に対する遺贈による所有権移転登記に関して、遺言執行者は単独で申請できないとされています(令5.3.28民二538通達関連)。
なお、受遺者に相続人以外の第三者がいる場合や、相続人全員に個別具体的な財産を遺贈するような遺言である場合は、原則どおり共同申請により遺贈を原因とする所有権移転登記をすることになります。
まとめ
遺贈による登記は実は奥が深い登記です。
遺言書を作成する場合には、登記手続きのことも考えながら遺言書の内容を考える必要があります。
遺言書の内容によって、相続手続きの進め方が変わってきますので、「違う言葉で書いておけばもっと楽に相続手続きが進められたのに・・・」という状況も十分考えられます。
遺言書の作成を検討されている方で、不動産の相続について遺言書に記載を検討している場合には、司法書士に相談をすることをおススメしします。