相続人が認知症の場合の遺産分割協議
相続が発生した場合、遺産を相続人でどのように相続するかの話し合いを行います。
これを遺産分割協議と言いますが、遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。
遺産分割協議は、相続人のそれぞれの意思を伝えあう必要がありますが、この時、相続人の中に認知症の者(判断能力が低下している者)がいる場合はその意思を伝えることができず、遺産分割協議ができません。
認知症の者を無視して遺産分割協議を進めることはできませんし、仮にそのまま進めたとしても遺産分割協議の成立について争われる可能性が高いですのでお勧めはできません。
では、相続人に認知症の者がいる場合、遺産分割協議はどうすればいいでしょうか?
成年後見制度の利用
相続人の中に認知症の方がいる場合には、その者に成年後見人を代理人として付けた上で、その後見人が本人の代理人として遺産分割協議に参加することになります。
ただ、これにはいくつか注意点があります。
①後見人は本人の法定相続分を守る必要がある
認知症の相続人の代理人として遺産分割協議に参加するわけですが、後見人は本人の法定相続分を守る義務があります。
例えば、相続財産に不動産しかない場合、認知症の者にも不動産を相続させることも検討しなければいけないということです。
代償分割や換価分割という方法で別の相続の形を作り出すことはできますが、やはり1つのハードルになることには変わりありません。
②後見人は本人の死亡まで任務継続する
遺産分割協議を行うために後見人を選任したのはいいものの、無事に遺産分割協議が成立し、相続手続きが全て完了したとしても、後見人は引き続き本人の後見人として業務を継続します。
後見人は一度選任すると、基本的に本人の死亡まで代理人として就任します。
現状では後見制度のデメリットとして捉えられており、多くの司法書士も後見制度のスポット的な利用を認めるべきだという声をあげています。
この記事を執筆している現在(2024年7月)、成年後見制度のスポット利用が議論されていますので、今後の動向に注目したいところです。