家族信託における信託財産は何を設定できる?
民事信託(家族信託)は、委託者(財産を託す人)が受託者(財産を託される人)に財産を託し、受託者が財産を管理・処分する制度です。
委託者の有する財産を受託者に託すわけですが、委託者はどういった財産を受託者に託すことができるのでしょうか?
信託法では、信託財産を次のように定義しています。
信託財産とは、受託者に属する財産であって、信託により管理または処分をすべき一切の財産をいう。
つまり、信託法上、信託財産の種類等については特段の制限はありません。
しかし、だからと言ってなんでもかんでも信託財産に設定できるわけではなく、他の法律や実務上難しいとされているものもあります。
家族信託における信託財産に関しては、金銭的価値を有するもの全てが対象とされています。
例えば、よくあるケースが不動産や現金です。
また、株などの有価証券、特許権など知的財産権、動産なども信託財産として設定が可能です。
【信託財産として設定できる財産】
①現金
②不動産
③有価証券(株など)
④知的財産権(特許権など)
⑤動産(ペット、絵画、宝石など)
⑥債権(貸付債権など)
など
一方で、信託財産として適さない財産もあります。
例えば、人格権(生命、身体、名誉など)や消極財産(借金などの債務)などは信託財産に適さないとされています。
【信託財産として設定ができない(難しい)とされている財産】
①人格権(生命、身体、名誉など)
②消極財産(借金などの債務)※1
③農地※2
④預貯金債権※3
など※1「債務」は信託財産とはなりませんが、受託者が債務引き受けによって債務を信託財産として引き受けることは可能とされています。
※2農地法の許可の問題があります。
農地を信託する場合には、宅地への転用を前提として行うか、農業委員会の許可(転用目的)を条件として信託契約を締結する形になるかと思います。
一方で、農地を農地のまま移転するような耕作目的では受託者が農業協同組合になる必要があるなどの条件があるため難しくなるかと思います。※3預貯金債権には基本的には譲渡制限特約が付されているため、委託者から受託者へ(信託による)移転させることはできません。通常は、預貯金債権ではなく現金そのものを指定して信託する形になります。
まとめ
民事信託(家族信託)における信託財産として設定できる財産について記載をしてきました。
簡単にまとめますと、次のように言えるかと思います。
信託財産として金銭的価値のある財産(積極財産)を設定でき、一部制限のある財産もある。 そして、人格権や消極財産(債務等)は設定できないが、債務引き受けによって実質的には信託をしたと同様の効果を生じさせることも可能である。 |
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