死後事務委任契約とはなんですか?
死後事務委任契約とは、死亡後の葬儀の手配や遺品の整理、役所関係の手続きなど、遺言書ではカバーできない事項(事務)を司法書士等に任せるための契約です。
これは生前の元気なうち(判断能力があるうち)に行う契約です。
特に、一人暮らし(独居)や相続人がいない方、相続人はいるけど遠方に住んでいる場合など、自分の死後の手続きを任せる人がいない場合に利用することが多いです。
死後事務委任契約は遺言書ではカバーできない事項を定めることができるので、遺言書と死後事務委任契約をセットで作成するケースが多いです。
死後事務委任契約で定められることは?
死後事務委任契約が得意とする事務は「葬儀」「片付け」「役所等の手続き」になります。
具体例にいくつか挙げてみたいと思います。
医療・介護に関すること
亡くなった直後、病院や施設から要求される部分です。
遺体の引き取り: 病院や老人ホームへ駆けつけ、遺体を引き取る
退院、退所手続き:事務手続きを行い、荷物を引き上げる
未払い費用の精算:入院費、施設利用料、医療費の未払い分を支払う
入院保証人への連絡・解除:保証人がいる場合、その債務を清算して契約を終わらせる
葬儀・供養に関すること
葬儀の主宰: 葬儀社を手配し、喪主として葬儀を取り仕切る
(例:家族葬で○○葬儀社を使う、無宗教で行う、など)
火葬の手続き:火葬許可証の取得、火葬場の手配
納骨・埋葬:お墓、納骨堂、樹木葬など、指定された場所へ遺骨を納める
永代供養の手続き:永代供養料を支払い、契約する
散骨:海洋散骨などの手配・実行
行政庁(役所)への届け出
死後14日以内など、期限があるものが多いため迅速な対応が必要です。
健康保険・介護保険の資格喪失: 保険証や受給者証を返却する
年金受給の停止手続き:年金事務所へ死亡の連絡を入れる
住民税・固定資産税の納税管理人選任:未払いの税金を精算する
※死亡届の提出は死後事務の受任者ではできないとされています。
住居・生活の解約・片付け
賃貸借契約の解除:アパートやマンションの解約手続き
住居の明け渡し:鍵の返却、敷金の精算
遺品整理(片付け):家財道具の処分・リサイクル手配
指定された形見(アルバムや時計など)を親族へ配送
公共料金の解約・精算:電気、ガス、水道、NHKの停止と最後の支払い
民間のサービスの解約
携帯電話・固定電話の解約
インターネットプロバイダの解約
クレジットカードの利用停止・退会
新聞、牛乳配達などの停止
サブスクリプション(動画配信、会員制サービス)の解約
デジタル遺品・連絡関係
SNS・WEBアカウントの削除:Facebook、X(旧Twitter)、ブログなどの閉鎖・追悼アカウントへの移行。
パソコン・スマホ内のデータ消去: ハードディスクの破壊や初期化。
関係者への通知:友人、知人、元同僚など(エンディングノート等のリストに基づく)へ死亡の連絡をする。
死後事務委任契約で定められないことは?
死後事務委任契約において、どのような事務を委任できるのか。
なんでもかんでも委任できるわけではなく、次に該当する事務は死後事務委任契約において定めることはできないとされています。
①遺言書で定める事項
②法令等で制限されている事項
遺言書で定める事項
遺言書に関しても、なんでもかんでも遺言書で定めることができるわけではなく、法的に効力を持つ事項が決められています。
一般的には、不動産や預貯金、株や車などの財産についての相続方法を定めることが多いと思います。
遺言書で定めることができる事項を遺言事項と言いますが、内容としては「身分関係」「財産関係」「執行関係」の3つにイメージとしては分けられます。
遺言事項については下記のとおりです。
身分に関すること
認知
婚姻関係にない相手との子を、自分の子として認めること。
未成年後見人の指定
親権者がいなくなる場合に、未成年の子の後見人(親代わり)を指定すること。
未成年後見監督人の指定
未成年後見人を監督する人を指定すること。
相続人の廃除
虐待や重大な侮辱をした相続人の相続権を剥奪すること。
相続人の廃除の取り消し
生前に廃除していた相続人の権利を復活させること。
相続・財産に関すること
相続分の指定・指定の委託
「長男に3分の2、次男に3分の1」など、法定相続分と異なる割合を決めること(または決める人を指名すること)。
遺産分割方法の指定・指定の委託
不動産は妻、預金は長男」など、具体的に誰に何を渡すかを決めること(または決める人を指名すること)。
遺産分割の禁止
死後5年以内の期間で、遺産分け(遺産分割協議)を禁止すること。
特別受益の持戻しの免除
生前贈与などで渡した分を「遺産の前渡し」として計算せず、そのままあげたことにすること。
遺留分侵害額の負担の順序の指定
遺留分(最低限の取り分)を請求された際、どの財産から順に支払うかを決めること。
遺贈
相続人以外の人や団体に財産を渡すこと。
※条件付き(負担付遺贈)や、期限付きも可能。
一般財団法人の設立(寄付行為)
遺産を使って財団法人を作る意思表示。
遺言の執行・その他
遺言執行者の指定・指定の委託
遺言の内容を実行する人(弁護士や親族など)を決めること。
祭祀(さいし)主宰者の指定
お墓、仏壇、系譜などを継承し、管理する人を決めること。
信託の設定
遺産を信頼できる人に託して管理・運用してもらう「遺言信託」を設定すること。
生命保険金受取人の変更
生命保険の受取人を遺言によって変更すること(※保険約款で認められている場合に限る)。
法令等で制限されている事項
法令等で手続きをするために資格が必要とされているものも委任することはできません。
例えば、登記は司法書士、訴訟は弁護士、税務申告は税理士というような事項です。
これらは登記や訴訟などは法律で資格制限が設けられていますので、死後事務委任契約の中で定めることはできません。
また、よくされる議論としましては、死亡届の提出(戸籍法で提出権者が定められている事項)も死後事務委任契約では定めることはできないとされていますが、使者として受け付けてくれるケースもあるようです。
死後事務委任契約の手続き
死後事務委任契約は、事務を委任する人(委任者)と任される人(受任者)で契約を締結する必要があります。
なお、司法書士等を受任者とする場合、個人事務所の司法書士に頼むと当該司法書士が死亡等した場合には死後事務が遂行されないことになります。
一方で、弊所のような司法書士法人として法人化している事務所ですと、受任者になるのは個人ではなく法人(司法書士法人)なので、死亡の概念がなくなる分、遂行されないリスクは軽減できると思います。
なお、死後事務委任契約書は公正証書にする必要はありませんが、トラブルを防止する観点からも公正証書で作成することをお勧めします。
弊所では、死後事務委任契約だけではなく、遺言書の作成とのセットでの作成にも対応しておりますので、お気軽にご相談くださいませ。
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